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東京地方裁判所 平成7年(特わ)366号 判決 1996年3月29日

本店所在地

東京都板橋区高島平七丁目三番一二号

株式会社味田中

(右代表者代表取締役 田中正男)

本籍

東京都板橋区蓮根二丁目二五番地

住居

同都同区四葉一丁目二二番一四号

会社役員

田中正男

昭和九年一〇月三〇日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官沖原史康、弁護人土屋東一各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社味田中を罰金一八〇〇万円に、被告人田中正男を懲役一〇月にそれぞれ処する。

被告人田中正男に対し、この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社味田中(以下「被告会社」という)は、東京都板橋区高島平七丁目三番一二号に本店を置き、飲食店の経営等を目的とする資本金五〇〇万円の株式会社であり、被告人田中正男(以下「被告人」という)は、被告会社の代表取締役として、被告会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿した上、

第一  平成二年一〇月一日から同三年九月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が五一〇七万〇九五八円(別紙1(1)の修正貸借対照表参照)であったにもかかわらず、同三年一二月二日、同都板橋区大山東町三五番一号所在の所轄板橋税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一五九万〇〇二八円で、これに対する法人税額が四一万九一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成八年押第二八六号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額一八三六万五二〇〇円と右申告税額との差額一七九四万六一〇〇円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れ

第二  同三年一〇月一日から同四年九月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が八〇〇五万七一一九円(別紙1(2)の修正貸借対照表参照)であったにもかかわらず、同四年一一月三〇日、前記板橋税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が四〇一万五八六一円で、これに対する法人税額が一一一万一五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の2)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額の二九二四万八七〇〇円と右申告税額との差額二八一三万七二〇〇円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れ第三 同四年一〇月一日から同五年九月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が九二〇六万三二七一円(別紙1(3)の修正貸借対照表参照)であったにもかかわらず、同五年一一月三〇日、前記板橋税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一〇二二万八七八五円で、これに対する法人税額が三〇七万一〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の3)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額の三三七五万九一〇〇円と右申告税額との差額三〇六八万八一〇〇円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書

一  石田きよ子、小宮みち子、八鍬恒雄及び宮澤正則の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  検察事務官作成の平成七年一一月九日付け及び同年一二月六日付け(四通。但し、預金についてのもの、代表者勘定についてのもの、損金の額に算入した道府県民税利子割についてのもの、未納事業税についてのもの)各捜査報告書

一  大蔵事務官作成の貸付金調査書及び買掛金調査書

判示冒頭の事実について

一  登記官作成の登記簿謄本及び閉鎖登記簿謄本二通

判示第一、第二の事実について

一  大蔵事務官作成の短期借入金調査書

判示第一、第三の事実について

一  大蔵事務官作成の建物付属設備調査書

判示第一の事実について

一  検察事務官作成の平成七年一二月六日付け捜査報告書(但し、前記繰越利益金(前記繰越損失)についてのもの)

一  押収してある法人税確定申告書一袋(平成八年押第二八六号の1)

判示第二、第三の事実について

一  田中文子の検察官に対する供述調書

一  黒澤邦彦の大蔵事務官に対する質問てん末書

一  大蔵事務官作成の黒澤勘定調査書

判示第二の事実について

一  押収してある法人税確定申告書一袋(平成八年押第二八八号の2)

判示第三の事実について

一  大蔵事務官作成の現金調査書、仮払金調査書、敷金調査書、建設仮勘定調査書、車両運搬具調査書、土地調査書、支払手形、預り金調査書及び仮受消費税調査書

一  押収してある法人税確定申告書一袋(平成八年押第二八六号の3)

(法令の適用)

一  罰条

1  被告会社

判示各事実につき、いずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項(情状による)

2  被告人

判示各所為につき、いずれも法人税法一五九条一項

二  刑種の選択

被告人につき、いずれも懲役刑

三  併合罪の処理

1  被告会社

刑法(平成七年法律第九一号による改正前のもの。以下、同様)四五条前段、四八条二項

2  被告人

刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の重い判示第三の罪の刑に法定の加重)

四  刑の執行猶予

被告人につき、刑法二五条一項

(量刑の理由)

本件は、飲食店の経営等を目的とする被告会社が、三事業年度にわたり合計七六〇〇万円余の法人税を免れた事案であるが、ほ脱税額は少なくなく、ほ脱率も通算約九四・三パーセントと極めて高率である上、その手口は、売上を一部除外したり、仕入先に依頼して架空の領収証を作成させ、架空の仕入高を計上するなど悪質なものであり、また、脱税の動機をみても、被告人は、被告会社及び自分の家族のため、業績が好調なうちにできる限り資金を蓄えおきたかったなどと述べているが、そのような事情があるにせよ違法な手段による蓄財が許容される訳ではなく、格別斟酌するに値しなんものであって、これらの諸点からすると被告人及び被告会社の刑事責任は重いというべきである。他方、被告会社はその後修正申告の上本件に関する本税、延滞税等を完納していること、被告人は本件犯行を深く反省し、被告会社の経理体制を改善してもいること、被告人には前科前歴が全くないことなど、被告人及び被告会社のために酌むべき諸事情も認められる。そこで、当裁判所は、以上のほか一切の情状を考慮し、主文のとおり量刑した次第である。

よって、主文のとおり判決する。

(求刑 被告会社・罰金二五〇〇万円、被告人・懲役一〇月)

(裁判官 平木正洋)

別紙1(1) 修正貸借対照表

<省略>

別紙1(2) 修正貸借対照表

<省略>

別紙1(3) 修正貸借対照表

<省略>

別紙2 ほ脱税額計算書

<省略>

ほ脱税額計算書

<省略>

ほ脱税額計算書

<省略>

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